森 正人 Masato Mori
RESEARCH

研究内容

異常気象を引き起こす地球規模の大気循環変動に関する研究を行っています。再解析データを用いた気候診断や、力学モデル・全球気候モデルを用いた数値シミュレーション実験により、大気循環変動のメカニズムや予測可能性を明らかにし、地球温暖化などの外的要因がそれらに与える影響を評価(アトリビューション)することで、気候変動を理解することを目指しています。

気候力学 テレコネクション 異常気象 地球温暖化 大気-海洋-海氷相互作用 北極ー中緯度連関 台風 気候変動
01 — ARCTIC–MIDLATITUDE LINKAGE

北極海氷の減少とユーラシアの寒冬

地球温暖化により北極海の海氷は急速に減少し、気温は全球平均に比べて3倍から4倍の速さで温暖化しています(北極温暖化増幅現象)。しかしその一方で、ユーラシア大陸では厳しい寒冬が頻発していました。バレンツ・カラ海の海氷減少が偏西風の蛇行(ブロッキング・WACEパターン)を介して大陸の寒波を強めるメカニズムを、大規模アンサンブル実験によって示しました。

また、大規模アンサンブル実験と観測データとを融合した新しい解析手法により、大気大循環モデルが海氷変動に対する応答を過小評価することを示し、観測ーモデル間の不一致の原因となることを指摘しています。現在は、北極-中緯度連関に果たす大気-海洋-海氷相互作用の役割の解明を進めています。

主要論文: Nature Geoscience (2014) / Nature Climate Change (2019, 2021) / SOLA (2022, 2025)
図1: WACEパターン(色: 850hPa気温偏差、等値線: 500hPa高度場偏差)
冬季の北半球卓越変動の一つである Warm-Arctic Cold-Eurasia/EastAsian (WACE) パターン。北極のバレンツ海・カラ海の海氷変動と密接に関係しており、海氷が少ない時に東アジア域は低温偏差になる傾向がある。色は850hPa気温偏差、等値線は500hPa高度場偏差。JRA55再解析データ(1979-2019年)より。Communications Earth & Environment (2024) のFig.2を改変。
02 — ATMOSPHERE-OCEAN-SEA ICE COUPLING

冬季テレコネクションパターンと大気-海洋-海氷結合

テレコネクションパターンは偏西風の蛇行を伴うことから、各地の異常天候の発現と密接に関係しています。中高緯度の海洋はその大気に対する受動的な性質がゆえに、熱帯の海洋とは異なり、テレコネクションパターンに与える影響は小さいと考えられてきました。しかしその性質がむしろ、テレコネクションパターンの維持にポジティブに働いていることが、大気海洋結合モデルと大気モデルの大規模アンサンブル実験より明らかになりました。

PNAパターンに対する中緯度海洋の役割や、エルニーニョ発生時の東アジアの冬の気温を決める要因など、季節予測の精度向上につながる力学過程の理解を目指しています。

主要論文: Communications Earth & Environment (2024) / GRL (2024) / Journal of Climate (2024)
図2: 3つの数値実験によるPNAパターンの比較
3つの異なる数値実験によるPNAパターンの比較。正のPNAパターンに伴う冬季SST偏差(色)と500hPa高度場偏差(等値線)。PNAの分散は、CHIST(結合実験)> AHIST(非結合: SST偏差あり)> ACLM(非結合: SST偏差なし)のように変わり、大気と海洋が結合している時が最も変動が大きくなる。GRL (2024) より。
03 — DETECTION & ATTRIBUTION

気候変化への温暖化の寄与を評価する

何か極端な気象現象や気候変化が起こった時に、それが自然の揺らぎとして生じたのか、あるいは地球温暖化などの外的な要因のせいで生じたのか(あるいはその両方なのか)を、直ちに判定することは困難です。

気候モデルを用いた大規模アンサンブルシミュレーションによって、CO2をはじめとする外的要因の寄与を定量化し、気候変動の実態を解明します。

主要論文: Nature Communications (2022) / Nature Geoscience (2014) / BAMS (2017) / SOLA (2025)
図3: 要因分析実験の概念図
要因分析実験の概念図。再現実験Aと、そこからある外部強制因子X(あるいは何らかの要素)を無くした仮想実験A'。両者の比較からXの効果を定量化する。

プレスリリース

PRESS RELEASES
2024.05.16
塩崎公大, 時長宏樹, 森正人:「エルニーニョの発達の早さが暖冬傾向と寒冬傾向を左右することを発見〜数ヶ月先の異常天候予測の精度向上に繋がると期待〜」 PDF ↗
2024.03.29
Masato Mori: How extratropical ocean-atmosphere interactions can contribute to the variability of jet streams in the northern hemisphere Kyushu Univ. ↗ EurekAlert! ↗
2024.03.15
森正人, 小坂優, 田口文明, 時長宏樹, 建部洋晶, 中村尚:「偏西風の蛇行が中高緯度海洋との連動によって増幅される仕組みを解明」 九州大学 ↗ PDF ↗
2022.07.15
山上遥航, 渡部雅浩, 森正人, 小野純:「北極海氷の減少を説明する新たなメカニズムを提唱―メキシコ湾流の温暖化による遠隔効果―」 PDF ↗
2019.01.15
森正人, 小坂優, 渡部雅浩, 中村尚, 木本昌秀:「冬季ユーラシア大陸中緯度域における寒冷化の要因分析〜北極海の海氷減少が寒冷化の約44%を説明〜」 先端研 ↗
2014.10.27
森正人, 渡部雅浩, 塩竃秀夫, 猪上淳, 木本昌秀:「ユーラシア大陸中緯度域で頻発している寒冬の要因分析〜北極海の海氷の減少により寒冬になる確率は2倍〜」
2010.11.19
木本昌秀, 渡部雅浩, 森正人:「2010年夏季の天候再現実験に成功―近年の海水温上昇が猛暑を底上げ―」(東京大学山上会館)

主な研究プロジェクト

RESEARCH PROJECTS
進行中
2025 – 2029年度 文部科学省「北極域研究強化プロジェクト(ArCS-3)」北極域環境変化と連動する気候災害の要因と予測可能性(実施担当者、研究課題代表者: 佐藤友徳)
2024 – 2028年度 学術変革領域研究(A)「ハビタブル日本 島嶼国日本の生存基盤をなす大気・海洋環境の持続可能性」(実施担当者/研究協力者、研究課題代表者: 岡英太郎)
2024 – 2026年度 環境研究総合推進費2-2401「日本・アジア太平洋地域の将来変化に関わる複合的な極端気象・気候現象の定量化と理解」(実施担当者、研究課題代表者: 堀之内武)
2022 – 2026年度 文部科学省「気候変動予測先端研究プログラム」気候変動予測と気候予測シミュレーション技術の高度化(全球気候モデル)(業務参加者、代表者: 渡部雅浩)
終了
2020 – 2024年度 文部科学省「北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)」気象気候の遠隔影響と予測可能性(実施担当者、研究課題代表者: 本田明治)
2019 – 2023年度 新学術領域研究「変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot」(研究分担者、研究課題代表者: 野中正見)
2019 – 2021年度 環境再生保全機構「環境研究総合推進費 2-1904 気候変動影響評価のための日本域の異常天候ストーリーラインの構築」(実施担当者、代表者: 高藪縁)
2018年8月 – 2019年3月 日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究促進費「平成30年7月豪雨による災害の総合研究」(研究協力者、代表者: 山本晴彦)
2017 – 2021年度 文部科学省「統合的気候モデル高度化研究プログラム」全球規模の気候変動予測と基盤的モデル開発(業務参加者、代表者: 渡部雅浩)
2016 – 2019年度 科学技術振興機構「戦略的国際科学技術協力推進事業」JPI Climate and Belmont Forum "Climate Predictability and Inter-regional Linkages(気候予測可能性と地域間連関)"(実施担当者、代表者: Daniela Matei)
2015年9月 – 2019年度 文部科学省「北極域研究推進プロジェクト(ArCS)」北極気候変動予測研究(実施担当者、代表者: 羽角博康)
2012 – 2016年度 文部科学省「気候変動リスク情報創生プログラム」直面する地球環境変動の予測と診断(業務参加者、代表者: 木本昌秀)
2007 – 2011年度 文部科学省「21世紀気候変動予測革新プログラム」高解像度気候モデルによる近未来気候変動予測に関する研究(業務参加者、代表者: 木本昌秀)