冬の異常気象

キーワード 「異常寒波・豪雪、シベリア高気圧、アリューシャン低気圧、WPパターン、冬のモンスーン、テレコネクション」

日本を含む極東域における冬季の平均的な地表循環場は、シベリア高気圧アリューシャン低気圧に特徴づけられます。この冬季の循環場は、所謂 “西高東低の気圧配置” です。この西高東低の気圧配置は、シベリア上の冷たい空気を東アジアへ吹き出し、東アジアに寒冷な気候をもたらす主要な要因の一つです。寒気の吹き出しに伴う大陸起源の乾いた空気は、日本へ到達する前に日本海において大量の水蒸気を供給されます。日本海で供給された水蒸気が本州や北海道の日本海側の地域に雪と降り、しばしば災害を引き起こします。冬季の間こうしたシベリアからの冷たく乾いた北西よりの季節風をもたらす気候システムは冬のモンスーンと呼ばれ、研究が盛んに行われています。

シベリア高気圧の強さは冬季の間に変動します。シベリア高気圧が強くなると、日本を含む東アジアへの寒気吹き出しも強まります。このシベリア高気圧の強さの変動が上空の偏西風の蛇行と密接に関連しているを、我々の研究室が明らかにしました。また、昭和38年豪雪の冬には日本の上空5kmに気圧偏差の南北双極子構造が確認され、これは西太平洋パターンと呼ばれています。この西太平洋(WP)パターンは東アジア域へ寒波をもたらすことため近年注目されています。私たちの研究室では、以上のような平年より寒い冬をもたらす空間構造の形成メカニズムについて力学的手法を用いて研究しています。


(11月16日~4月14日の平年的な海面気圧(黒線; 4hPa毎)、上空1.5km付近の温度(東西平均からのずれを色で示しています; ℃)と水平風(矢印)。
シベリア高気圧の中心付近からその東側に低温な領域が広がっており、日本を含む東アジアはシベリア高気圧の寒気の吹き出しの影響を受けることが示唆されます。


(上左図) 12月上旬の上空 5 kmの平均的な気圧配置図。
(上右図) 2012年 12月上旬の上空 5km の気圧配置図。
(下左図) 12月上旬の上空1.5km付近の平均的な水平風 (矢印)、 2012年12月上旬の上空1.5kmの平年からの温度差(色、℃)。
左図と中央図の上空 5 km気圧配置図を比べると、2012年の12月上旬は平年に比べ気圧配置が大きく異なり、この空間構造は西太平洋パターンと呼ばれている。このとき、上空 1.5km付近は日本を含む東アジアの領域で低温が観測されました。この低温はWPパターンの影響であることが示唆されます。