気候系のhot spot:熱帯と寒帯が近接するモンスーンアジアの大気海洋結合変動 - 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 平成22年度~26年度

レポート:海外滞在参加報告

ハワイ大学滞在記

  • 日時:2012年1月10日-3月25日
  • 場所:アメリカ・ハワイ大学国際太平洋研究センター
  • 報告者:青木 邦弘 (北海道大学大学院地球環境科学研究院 研究員)

北海道大学の短期滞在プログラムを利用してハワイ大学を訪れる機会がありました。ハワイ大学は、ハワイの玄関口でもあるオアフ島はホノルル市にあります。ホノルル市は世界有数の行楽地であるワイキキで有名ですが、ハワイ大学はそこから車で10分程山側に位置するマノアというところにあります。マノアは都会のすぐ隣にもかかわらず、山に囲まれた緑豊かな土地で、いかにも南国と言った風な植物が生い茂り、また、耳を澄まさずとも鳥たちのさえずりの聞こえる長閑な場所です。オアフ島の観光名所と言えば、ワイキキ、ノースショア、また最近ではカイルアが有名ですが、自然に関してハワイらしさを感じることのできるところはと聞かれれば、私は迷わずこのマノアをお勧めします。

私の訪れたのは、ハワイ大学にある国際太平洋研究センター (International Pacific Research Center;略称IPRC)という研究所です。海外なのに日本語名の付いた研究所というのに奇妙さを覚える方もおられるかも知れませんが、IPRCは、日本海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で運営されており、日本と大変馴染みの深い場所です。したがって、日本からの研究者も大変多いです。IPRCでは、アジア・太平洋域を中心にした気候変動とその予測可能性についての研究、さらには,地球規模の気候変化が地域気候に及ぼす影響に関する研究が行われています。IPRCでの研究成果は、日本の気候や海洋に関する諸問題の提示あるいは解決に大きな貢献をしており、過去に日本の報道で取り上げられることも多々ありました。また、IPRCは世界的にも有名な研究所でもあります。聞くところによると、毎年、世界中から優秀な若手研究者がこの研究所で腕を磨こうと集まってくるそうです。私が優秀かどうかはさておき、私もこの研究所で腕を磨こうと訪れた一人でした。

IPRC滞在における私の目的は、同研究所教授のJ. McCreary氏とその共同研究者である古恵亮氏と共同で研究を進めることでした。両氏は、海洋力学に関する理論的な研究が専門であったので、私の研究に対する理論的考察を深める上で、この滞在は大変貴重なものでした。私の滞在期間は2カ月半と共同研究の成果を挙げるには短かったため、両氏とのディスカッションを重ねることで共同研究の基礎を築くことを目標としました。ディスカッションは、基本的に毎週一回行い、必要があればさらに行うという具合で進めてきました。また、McCreary教授のご厚意で、週3回ある彼の授業を聴講することができました。この特別聴講は、私の英語の練習との目的で始めたのですが、授業の内容も私の研究に非常に関連するものであったので、私の研究を進める上で大変役に立ちました。

ディスカッションを通して、「自分の考えをはっきりさせる」ことをこれまで以上に意識するようになりました。定例のディスカッションでは、冒頭に私がその日の議題を提示し、それを元に議論をするという形で進めてきました。したがって、ディスカッションが有意義になるかどうかは、冒頭の私の説明がどれだけ巧く行われるかで決まります。これを行う際に、慣れ親しんだ日本語環境と不慣れな英語環境では全然違います。得意な日本語が使える環境では、自分の考えが漠然としていても相手になんとなく伝えることができ、なんとなく議論が成立します。しかし、不得意な英語だと、十分な言い回しができないため、漠然とした考えはなかなか相手に伝わりません。ディスカッションの準備をする際は、なるべく自分の考え、つまり、ディスカッションでの論点をはっきりさせることを心がけました。このようなことは、誰もが知っている当たり前のことなのですが、いざ実践となるとなかなか難しいものがありました。

研究は日本でもできますが、海外に行かなければ気付かないことがあるのも事実です。IPRC滞在における私の意識の変化は取るに足らないことかも知れませんが、海外の研究所で過ごしたことによって初めて、それが如何に重要であるか身を持って知ることができました。今回のハワイ大学の訪問によって、上に挙げたことを含め、日本では感じることのできない数多くの良い経験ができました。これを単に良い思い出とするのではなく、今後の私の研究者人生に生かしていきたいと強く感じています。


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