気候系のhot spot:熱帯と寒帯が近接するモンスーンアジアの大気海洋結合変動 - 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 平成22年度~26年度

レポート:学会参加報告

「成層圏突然昇温とその天気や気候変動に対する役割に関する研究集会」に参加して

  • 日時:2012年2月22-24日
  • 場所:京都
  • 報告者:西井 和晃 (東京大学 先端科学技術研究センター 助教)

成層圏突然昇温とは、冬に北極や南極の成層圏(高さ10kmから50km程度の大気)の気温が数日間で数十度も上昇する現象です。1952年の発見以後しばらくは、地上付近に生活している私達には関係のない出来事のように思われてきました。しかし、長期間の観測データの蓄積と、コンピュータシミュレーション技術の発達により、この成層圏突然昇温が日々の天気や気候へ大きく影響していることが次第に明らかになってきました。また、2002年に南極上空でオゾンホールが発生しなかったのは、この年の9月に発生した成層圏突然昇温によって、成層圏オゾンを破壊する大気中での化学反応が抑えられてしまったためです。このような理由により、成層圏突然昇温の発生のメカニズムやその予測、天気・気候への影響、そして温暖化した時の性質の変化についての研究が、活発に研究されています。この成層圏突然昇温を研究している世界中の研究者が参加する国際会議が、2012年2月22日から24日に京都で行われました。第一線の研究者による最新の研究成果の報告とともに、温故知新("To the past to inform the future")という本会議のテーマに沿って、著名な研究者による成層圏研究の歴史の紹介が行われました(この様子はUstream で配信され、以下のURLから視聴できますhttp://www.ustream.tv/channel/ssw2012)。

私は、対流圏の偏西風の大きな蛇行を引き起こし、異常気象をもたらすブロッキング高気圧と呼ばれる現象と、成層圏突然昇温についての研究成果を発表しました。研究集会に参加する目的の一つは他の研究者と議論することであり、国内外の研究者との議論を楽しむことができました。しかし、自分がやりたいと考えていた、北太平洋海面水温の変動が成層圏突然昇温に与える影響についての研究が、すでに他の研究者によって行われてしまっていてがっかりしました。研究の世界は常に競争であると実感させられました。


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