気候系のhot spot:熱帯と寒帯が近接するモンスーンアジアの大気海洋結合変動 - 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 平成22年度~26年度

縁辺海の大気海洋相互作用が海洋生態系に及ぼす影響の評価

A01-K2. 縁辺海の大気海洋相互作用が海洋生態系に及ぼす影響の評価
代表 吉江 直樹*(愛媛大学・助教)

[学位取得:*海洋学]

研究目的

世界的な流れとして、個々の現場観測と直接比較可能なローカルスケールにまで踏み込んだ様々な環境変化が海洋生態系・物質循環に及ぼす影響の評価が急務とされている。本研究では、最新の海洋生態系・物質循環モデルを既存および新規現場観測からの生物地球化学的データにより補いながら、中緯度の縁辺海・沿岸域における生態系・物質循環を現実に近い形で再現することをめざす。そして、ローカルスケールの物理環境変化が海洋生態系・物質循環に及ぼす影響の実態を把握すると共に、支配的な物理・生物地球化学的過程を明らかにする。最終的には、大気海洋相互作用により起こりうる様々な物理環境変化に対応させた仮想実験を行い、中緯度の縁辺海・沿岸域における大気海洋相互作用に対する海洋生態系・物質循環の応答メカニズムを明らかにすることを目的とする(図1)。

初年度の研究内容

  1. (i)   海洋生態系・物質循環モデルの調整・応用
    これまで開発・応用してきた海洋生態系・物質循環モデルeNEMUROver4.0(図2)を用いて、モデルの生物地球化学的過程に関する方程式の改良・パラメータ調整を行い、現場観測データセットと比較しながら、東シナ海および瀬戸内海の代表的な観測点における生態系構造・栄養塩循環の季節変化を再現することを試みる。
  2. (ii)  既報観測データの収集・解析
    東シナ海および瀬戸内海に関して、西海区水研、長崎大、鹿児島大、愛媛大、愛媛県水研などに蓄積された既報の生物地球化学的観測データを発掘(例えば、論文だけでなく紀要や報告書からも観測データを抽出)・収集する。
  3. (iii) 生物地球化学的データの現場観測
    大気海洋相互作用による突発的な環境変化に対する生態系応答の実態を把握するために、必要に応じて集中観測を実施する。東シナ海においては、中村(啓)氏(A01-1班、分担)と共に鹿児島大・水産学部練習船「かごしま丸」を用いて観測を行う。沿岸域においては、愛媛大CMES・研究調査船「いさな」を用いて観測を行う。具体的には、低次生態系構造と栄養塩動態を把握するために、栄養塩、Chl.a、植物・動物プランクトン生物量・群集組成などについて集中観測を実施する。

吉江図2 吉江図1


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