成層圏の流れと気温の変動

キーワード 「成層圏」

高さ約10kmまでは対流圏と呼ばれ、雲が発生し天気の移り変わりのある領域です。これに対し、高さ約10kmから50kmくらいまでを成層圏と呼びます。ここでは通常の雲は出来ません。また、この領域の大気は非常に薄いため、対流圏の空気の10分の1程度の質量しかありません。しかし、この僅かな質量しか無い成層圏の風や気温の変動が、その下の対流圏の天気や気候に影響を与えることが近年分かってきました。



上の図は各緯度で東西方向に平均した西風の緯度高度分布を示しています。もともと一番左の2012年12月21〜25日平均図の等値線で示すように、冬の成層圏の北極近くでは50~60m/sという非常に強い西風が吹いています。この西風が急激に弱まり、1月中旬には東風になっています。ここでは示しませんが、このとき北極上空では普段よりも気温が上がっています。この現象は「成層圏突然昇温」と呼ばれています。15~19日には対流圏の北緯60°以北に,青色で示す普段よりも西風が弱いところが見え、成層圏の西風弱化シグナルと繋がっています。この特徴は他の年の成層圏突然昇温の発生した後にも頻繁に観測されているので、成層圏の西風の変化が、対流圏の西風の変化を引き起こした証拠かもしれません。このような対流圏の西風の変化は冬の異常気象と結びついたりします。私たちの研究室では、このような成層圏の変動が引き起こされる原因や、その変動が対流圏へ与える影響のメカニズムについての研究を行っています。